2.施工計画(体制)について(どのような体制で計画するのが適切か)

建設業全体のレベルアップや適正化の名のもとに請負契約が図られること、さらには建設工事における適正な施行を確保しながら建設業の発達を促進するため、そして公共の福祉の増進に役立たせることなどを目的に定められた法律が「建設業法」といいます。

現場に配置するべき体制について
・一般建設業と特定建設業について
建設業を営む者は元請や下請を問わず軽微な工事以外の建設工事を行うには、「建設業許可」を受けなければなりません。建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」という二種類に区別されています。「一般建設業」は軽微な工事以外の建設工事を請け負うことができますが、下請業者下請発注額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上であれば「特定建設業」の許可を受ける必要があります。一般建設業の許可を受けていれば元請として自社施工、または下請業者下請発注額が4,000万円未満であれば工事の大小なども関係ないため依頼を受け付けることができます。

・監理技術者や主任技術者を置くべきときとは?
建設現場や工事現場には施工の状況を管理、監督をするために「主任技術者」や「監理技術者」といったある一定の資格や経験を有する技術者を配置することが義務づけられています。
「主任技術者」は、工事の大小や請負金額に左右されることなく建設現場や工事現場に必ず置く技術者のことを指します。その一方で、「監理技術者」は4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の工事を直接請け負う場合に現場に置かなければならない技術者のことであり、こういったケースでは主任技術者に代えて監理技術者を現場に置く必要があるのです。
尚、これら技術者と企業の雇用関係は直接的、そして恒常的な関係が必要とされています。例えば、出向者や派遣社員、短期で雇用している社員などといった場合には主任技術者や監理技術者として現場に配置することはできないのです。

・専門技術者を置くべきときとは?
土木や建築といった一式工事を行う際に、施工作業のなかに専門的な工事が含まれているときには専門技術者を現場に置く必要があります。専門技術者は各施工作業における主任技術者の資格を持っている人でなくてはなりません。

公共性のある重要な工事に必要な体系
請負契約における金額が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上で、国や地方自治体による施設や工作物の発注、さらには人が多く利用するような施設の工事、すなわち「公共性のある重要な工事」に関しては「工事現場ごとに必ず専任の技術者」を置かなければなりません。

・専任の技術者を置くべきときとは?
専任の技術者は、営業所の専任技術者や他の現場において主任技術者や監理技術者といった職務を兼任することはできません。そのため、公共性のある重要な工事における現場では他の工事現場との職務と兼任することなく、所属している工事現場に常勤することが決まっています。ただし、営業所の専任技術者の中には近接した工事現場や契約を締結した場所が当該営業所であった場合、さらには当該営業所といつでも連絡がとれる状態に置くことができれば兼務することが可能になります。
尚、下請け工事の場合は施工期間のあいだは技術者を配置しなければなりませんが、工事が稼働しないと明らかになっている間などは必ずしも当該営業所に専任の技術者を置く必要はありません。

・専任の監理技術者を兼任できる場合とは?
工事現場の業務を総合的に監理する専任の監理技術者は、基本的には二つ以上の工事現場を兼任することができません。しかし中には、請負契約をする工事の契約工期が重なっていて、尚且つ工事の対象が同一とされるものであれば二つの工事を専任の技術者が兼任可能になります。

JV工事に配置する技術者について
・共同企業体の二つの形態について
JV(ジョイント・ベンチャー)工事とは建設工事共同企業体工事のことを指し、これらの形態は「特定建設工事共同企業体」と「経常建設共同企業体」というように区分されています。特定建設工事共同企業体はその名のとおり特定の施行を目的として複数企業が共同で結成している企業であり、工事が完成したあとや工事を受注しなかったときには解散します。一方、経常建設共同企業体は中小建設業者や中堅の建設業者が継続的な協業関係を確保することで、経営力や施工力を強化することを目的に結成された形態です。

・共同施工方式と分担施工方式について
共同企業体は二つの施工方式に分かれています。一つ目の「甲型共同企業体(分担施工方式)」は、出資の比率に応じて資金や人員、そして機械などを搬出して共同で施工する方式です。もう一つの「乙型共同企業体(分担施工方式)」は共同企業体の工区に分割し、各構成員がそれぞれ分担した工事に責任を持ち施工する方式のことをいいます。
甲型共同企業体の利益は出費比率に応じて分配され、乙型共同企業体の利益は分配ではなく分割した工区ごとに清算されるようになっています。出費比率や分担する工区に関しては、協定書において定められています。

・共同企業体で作業する場合の技術者配置について
共同企業体で作業する場合にも各工事現場に技術者の配置を行います。甲型共同企業体の場合は請負契約における金額が3,000万円(建築一式工事の場合は4,500万円)未満であれば、全ての構成員が現場に国家資格を有する主任技術者を配置する必要があります。請負契約における金額が3,000万円(建築一式工事の場合は4,500万円)以上の場合には、構成員のなかから一つの企業が監理技術者を配置しなければなりません。
乙型共同企業体の場合は、分担した工事にかかる請負契約における金額が3,000万円(建築一式工事の場合は4,500万円)未満の場合に、全ての構成員が現場に国家資格を有する主任技術者を配置する必要があります。請負契約における金額が2,500万円(建築一式工事の場合は5,000万円)以上の場合には、監理技術者および主任技術者に関しては専任になります。

監理技術者資格者証について
国や地方公共団体、または公共法人などから建設工事の発注を受ける時には、工事現場を専任する技術者は「監理技術者資格者証」の交付を受け、監理技術者講習を受けている人でないといけません。専任で配置する技術者と元請業者の雇用関係は直接的、そして恒常的な関係が必要とされています。

工事の一括下請負について
請け負った工事を丸々すべて、もしくはその主な工程部分を他の業者に丸投げ、請け負わせることを「工事の一括下請負」といいます。しかし、工事の一括下請負は発注者の不安を募らせ信頼を裏切ることにもなりかねず、手抜き工事や作業員の労働条件が悪くなる、さらには悪質な建設業者の発生を招く恐れがあることなどから、建設業法において公共工事に関しては全面禁止、民間工事に関しては発注者による承諾が書面にて認められれば合法とされています。

特定建設業者の責務に関すること
建設業法、建築基準法、労働基準法、労働安全衛生法などの法令に下請業者が違反しないように元請業者は指導や是正指導、万が一是正しないというときには許可行政庁へ知らせなければなりません。これらの指導の実施を「特定建設業者の責務」といいます。

施工体制台帳や施工体系図について
「施工体制台帳」は下請契約額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上になる時に特定建設業者が作成することが義務づけられています。施工体制台帳には工事の施行を請け負う業者名や技術者名、施工範囲などを記載する必要があります。施工元請業者が施工内容をきちんと把握できるようにすることが目的であり、未然にトラブルの発生や悪質業者が入り込むことを防止するといった効果があります。
「施工体系図」は、特定建設業者により作成された施工体制台帳を基に各施工の分担を分かりやすく図にしてまとめたものを指します。施工に関わる全員がすぐに目につくような場所に施工体系図を提示して、内容に変更があればその都度記載内容を変更する必要があります。尚、施工体制台帳を作成された上で下請負人がさらに工事を下請負した時には、施工体制台帳を作成した元請の特定建設業者に「再下請負通知書」を提出する必要があります。

・施工体制台帳の作成するための手順
施工体制台帳は、@一次下請締結後、元請の特定建設業者が遅滞なく、一次下請負人に対して施工体制台帳作成工事である旨を通知するとともに、全ての人は見やすい場所にその旨の書面を提示します。その後、施工体制台帳や添付書類、さらには施工体系図を整備します。A二次下請締結後、一次下請負人は再下請負通知書を元請の特定建設業者に提出するとともに、二次下請負人に対して施工体制台帳作成工事である旨を通知します。再下請負通知書を受け取った元請の特定建設業者は、その内容を基に施工体制台帳や施工体系図を整備します。B三次下請締結後、二次下請負人は再下請負通知書を元請の特定建設業者に提出するとともに、三次下請負人に対して施工体制台帳作成工事である旨を通知します。
尚、施工体制台帳に記載する下請負人の範囲に関しては、一次下請に限らず契約に関わる全ての下請負人は対象になります。

・施工体制台帳における添付書類に関して
施工体制台帳には工事内容や建設業許可など記載しなければならない内容がいくつかありますが、それと同時に「請負契約書」といった書類を添付する必要があります。添付資料の内請負契約書には契約内容が書面としてきちんと記載されていることから、金銭絡みのトラブル争いなどを防ぐためにも重要になる書類です。

各営業所に設置する帳簿について
請負契約を交わした内容を記載した「帳簿」をそれぞれの営業所に設置する必要があります。帳簿には必要事項を記載したうえで、契約書又はその写し、領収書又はその写し、施工体制台帳の一部などを帳簿に添付する必要があります。

建設業法違反や建設工事紛争審査会について
施工を請け負う建設業者が「建設業法違反」をすると指示処分、営業停止処分、許可取消処分という「監督処分」の対象になります。また、国土交通本省や各都道府県には建設工事に関わるトラブルや問題が発生した際にこれらの請負契約を巡った争いを解決するための機関として「建設工事紛争審査会」が設置されています。