「施工計画書」とは、主に建築工事における施工内容などを具体的に記載した計画書のことを指します。これを工事が始まる前に監督員に提出します。施工計画書に記載された内容で工事を進めていくため、請負者と監督員が打ち合わせをするときにも非常に重要な資料になります。施工計画書の記載内容に変更が生じる場合や工事内容に変更点があるような場合には、変更になる事項がきちんと分かるように変更施工計画書を提出する必要があります。施工計画書に記載事項については以下を参照してください。
施工計画書に記載した事項に従い、請負人が施工・施工管理を行います。これらの施工計画書を作成せず現場作業を進めることはできません。以下のような必要事項を記載した施工計画書を監督員に提出しますが、監督員によりさらに補足で入れてほしい事項を求められたときには別途追記するようになります。尚、施工計画書を作成するにあたり検討する主な基本項目は、工事の目的や内容などに関しての把握、現場条件、基本となる工程、施工に伴い使用する機械や資材、施工順序、そして仮設備などについてです。これらの内容を十分な現場調査を繰り返すことでよく検討し、具合的で効果的な計画書を作成することが大事になります。
工事概要
・・・工事名称、河川又は路線名、工事場所、請負代金、発注者名、請負者名、工事内容、位置図、一般平面図、契約年月日、工期など、工事の概要及び工事内容を詳しく記載します。
A 計画工程表
・・・工事内容に関する工程を大まかに分類したものを、バーチャート方式やネットワーク(PERT)、と呼ばれる工程表で作業開始や作業終了が分かるように作成します。尚、工程に関して変更がある場合には、その都度監督員と工程変更に関する協議をする必要があります。過去のデータなどをもとに気象や地質、地下水などの調査をして、予想される影響に関しても考慮したうえで計画工程表に表示します。
B 現場組織表
・・・現場の組織編成や命令系統、ならびに業務分担施工体系図が分かるように記載する表で、管理技術者や専門技術者を置く工事に関しては担当者名を記載します。現場の組織編成表には各担当者により業務分担がしっかり分けられ、その内容がきちんと明記されているかが大切なポイントになります。また、夜間や休日などにおける連絡体制に関してもきちんと準備してく必要があります。
・・・工事中に使用する機械について記載します。設計図書で指定されている、又は監督員により必要だと認められた機械について、機械名やメーカー名、規格、そして台数などを記載します。尚、工事中に使用する船舶や機械で、設計図書で指定されている機械以外の主要なものについても記載します。機械に関しては排出ガス対策型、そして騒音対策型を使用する旨が明示されている必要があります。
D 主要資材
・・・設計図書で数量確認し、工事で使用する主要資材や指定材料の品名や規格、数量などを記載します。設計図書と仕様する資材とが一致している必要があることから、記載漏れや記載間違いなどがないように気をつけます。
E 施工方法
・・・施工計画書のなかでも最も重要とされる事項であり、各工種に関する作業工程に詳細に記載します。主要工種ごとの作業フロー、使用機械、仮置場や仮設備の配置場所、留意事項や施工方法などを記述します。請負者と監督員とのあいだでイメージが一致している必要があることから、仮設計画や施工方法を具体的に記載されている必要があります。尚、施工方法等の記載にあたり、関係する法令や指針などを参考に整合性を図れているかを具体的に記載します。仮設計画については、仮設平面図などを用いて具体的に記載するようにします。
F 施工管理計画
・・・設計図書等に基づき、工程管理や出来形管理、品質管理計画、段階確認、品質証明、写真管理基準などについて記載します。段階確認では、監督員による検査や立ち会いのもと必須事項が記載されているかを確認します。また、写真管理基準では、管理基準と施工計画書に必要とされるものだけを納品します。工程管理に関しては、作業工程ごとに適切な施工手順が記載されているか、また工程ごとに特に気をつけたい注意事項などがあれば記載します。
・・・労働安全衛生法や土木工事安全施工技術指針などの法律や指針を基に安全計画を立てます。工事安全管理対策や工事現場の設備の点検整備、第三者施設への安全対策、そして毎月行う安全・訓練の活動計画について記載します。防災体制が確立されているか、そして安全順守などの実施計画についても明確に記載する必要があります。工事に伴い想定されるトラブルや危険性における原因を突き止め、これらに対して事前に対策や改善を行うことが大切になります。そして、万が一工事中に事故が起きたときへの備えとしてどういった対策が必要かなど具体的な準備を行う必要があります。
・・・事故や大雨、強風などの災害時の緊急事態が発生した場合に対応できる組織体制や連絡系統図を記載します。緊急時の連絡体制や見回り確認体制がきちんと確立されているかを明記します。尚、夜間や休日における連絡先も詳しく記入し、万が一事故や災害が発生した時にも即対応できるように組織体制を編成します。
I 交通管理
・・・工事に伴う交通処理や交通対策について記載します。資材の運搬ルート、機械の輸送方法などにおける安全運転や過積載防止の取り組みが適切になされているかを明記します。必要に応じで交通誘導員の配置や保安施設、ならびに標識などを設置しますが、これらに関して所轄の警察署と事前に打ち合わせを行い施工計画書にその内容を具体的に記載します。
J 環境対策
・・・工事現場周辺の環境の保全を図ることを目的とした対策(騒音や振動、水質汚濁、ゴミ、ほこり処理、事業損失防止対策、排出ガス対策などへの対策)を記載します。事前に現場調査を行い、工事により起こり得る影響に対して適切な対策方法を検討する必要があります。尚、工事中に注意の住人から申し出があった際に、誰が対応するのかといったことも作業員全員に周知できるように計画しておきます。
・・・工事現場の環境整備に関する実施内容や実施場所などの計画(仮設や安全関係、営繕関係など)を、周辺にお住まいの住人に対して周知するために記載します。作業員の休憩場所や飲食した際に生じるゴミの処理方法、喫煙場所の指定などについて詳しく明記します。
L 再生資源の利用の促進及び建設副産物の適正処理方法
・・・ 再生資源利用計画書や建設副産物搬出経路などに関して、設計図書や再生資源利用の促進に関連した法律に基づき記載します。廃棄物処理法などの法令に遵守している内容であるか、計画書の内容が適切に記載されているかといったことに注意して記載する必要があります。
M イメージアップの実施内容
・・・ イメージアップのための対策について、具体的に計画して分かりやすく記載します。
N その他
・・・ その他に重要とされる事項に関して、官公庁への手続き、地元への周知、休日などの項目を必要に応じて記載します。
施工計画書作成にあたり大切になるポイントについて
施工計画書を作成する理由は満足のいく建物を構築するためだけでなく、建築工事をよりスピーディーに効率よく進めるために重要になるのです。そこで、施工計画書を作成するにあたり特に大切になるポイントについて以下でいくつかご紹介します。
ポイント(1)必要とされる必要事項をきちんと記入する
施工計画書は、記載しなければならない事項がたくさんあるため一から作成すると非常に時間がかかります。しかし、記載を求められている事項に関しては一つとして省略してはいけない重要事項であるため、何度も作成し直すといったことにならないように各自治体で必要とされている事項に沿って正確に記入することがポイントになります。
ポイント(2)記載内容は具体性がなければならない
施工計画書に記載された事項に関しては、目標を達成するための工夫や方法などを具体的に説明した内容でないといけません。何を意図しているか分からない内容であれば、工事の実施内容における信頼性が低下してしまうからです。そのため、課題への取り組みや対策について、分かりやすく詳細を記載することが望ましいといえるでしょう。
ポイント(3)記載内容が不足しているときには追記が必要
請負者が作成した施工計画書を受け取った監督員が、記載内容が不足と判断した際には詳細を追加記載する必要があります。そのため、施工計画書の記載事項については必須となる事項、そして監督員との協議により省略できる事項、さらには設計図書に明記された内容であれば記載する事項などがあります。
ポイント(4)施工計画書に工夫を取り入れるためには現地調査が重要
施工計画書を作成する前には現場の状況などをより深く理解するために、十分な「現地調査」を行う必要があります。事前に現地調査、並びに公害に対する調査などを行うことで施工計画を立てるうえで必要なる諸条件などを細かく確認することができますし、監督員に報告する際や施工計画書を作成する際にも創意工夫を盛り込むことができます。
ポイント(5)施工計画書と現場の施工内容が一致していることが大事
現地調査を基に施工計画書の内容と現場の施工内容と一致していること、現場の条件に合った施工計画書が作成されていること、そして契約内容が変更されたときにその都度変更計画書が作成されているかなど、その状況に合った適切な施工計画書が作成されていることが大切になります。